メタボリックシンドロームのキーワード

腹腔内内臓脂肪蓄積が糖尿病や高脂血症、高血圧といった
マルチプルリスクを合併しやすいことは既に述べてきた。

この原因をさらに追求していくと脂肪内に存在する脂肪細胞から分泌
される因子、すなわちアディポサイトカインがリスクを軽減するのに
重要な働きを担っており、その分泌異常がメタボリックシンドロームを
引き起こす原因になっていることもわかってきた。

アディポサイトカインとは

 脂肪細胞から分泌されるサイトカインのこと。

 ちなみにサイトカインとは細胞から産生される高分子物質で
 受容体を持つ細胞に結合し、細胞増殖作用、細胞分化作用など
 を発揮する物質のこと。

 皆さんご存じの成長ホルモンや卵巣ホルモンなどの”ホルモン”
 との違いは、サイトカインの場合、局所での作用が主で、
 産生する細胞とその周辺の細胞に作用する。

 アディポサイトカインは何らかの生理活性を有し、人間の営みが
 正常に行われるようバランスを保っているが、内臓脂肪蓄積状態では
 その産生が過剰もしくは過少になり、結果的にメタボリックシンドローム
 を起こすきっかけになっていると考えられている。

   以下に代表的なアディポサイトカインについて概説していく。

1.アディポネクチン

ここ数年最も注目され研究の進んでいるアディポサイトカインである。

<特徴>
その大きな特徴は、脂肪細胞から分泌されるタンパクであるにも
かかわらず、内臓脂肪が過剰な状態になるとその血中濃度が低く
なることである。

すなわち、肥満者ほど血中濃度が低くなるのである。
また、男性よりも女性において濃度が高くなるのも特徴のひとつである。

<病態との関連>
アディポネクチンには以下の種々の機序により、血管の障害を防ぐ作用があることがわかっている。
1.抗新生内膜増殖作用:抗動脈硬化作用
2.抗炎症作用
3.抗インスリン抵抗性作用:抗糖尿病作用

このことはアディポネクチンが三大危険因子のうちの二つである高コレステロール
血症、 糖尿病から血管を守る働きをしている事を示している。

尚、アディポネクチンの血中濃度は、5〜10μg/mlとされている。
4以下では狭心症や心筋梗塞などの虚血性心臓病に
なりやすいことがわかっている。

2.ビスファチン

<特徴>
皮下脂肪に比して内臓脂肪から豊富に分泌されるアディポサイトカインである。
内臓脂肪細胞から分泌されるため、内臓脂肪蓄積とともに血中濃度が高くなる。


血糖を下げる作用のあるインスリンと同様の作用があることが指摘されており、
実際にインスリン受容体と結合して血糖を下げる働きがある。

<病態との関連>
アディポネクチンと異なり、内臓脂肪蓄積状態では血中濃度が上昇することが
わかっている。
そのため、内臓脂肪蓄積のひとつのマーカーとして使える可能性がある。

3.TNF-α

<特徴>
以前にカケクチンという分子として報告されており、がんの時に
マクロファージから分泌される悪玉のタンパク質として同定されていた。

ところが、肥満マウスでその血中濃度が上昇していたため、ヒトの肥満状態
においてもではないかと推測されるようになった。
実際、ヒト肥満状態では、TNF-αの増加がインスリンの効果を妨げる作用
があり(インスリン抵抗性)、高血糖状態を招く事がわかっている。

<病態との関連>
炎症性サイトカインとしても知られている。すなわち、TNF-αの増加は、
インスリンの効果を半減させ血糖を上げるだけでなく、炎症を惹起して
血管や組織の障害をもたらし、二次的にも動脈硬化を促進しているといえる。

4.PAI-1

<特徴>
出血をしたときには血を止めるすなわち止血するため、体には様々な仕組みが
備わっている。その中心的な役割を果たすのが、PAI-1とフィブリノーゲンで
ある。

止血をするとき、まずフィブリノーゲンという物質がフィブリンに変換され、
血の固まりである血栓ができる。しかし、血栓が多くなりすぎると血管が
詰ってしまう可能性があるため、それを溶かすプラスミンが産生される。
しかし、プラスミンが多くできすぎると今度は血がさらさらになりすぎて
出血しやすくなるので、それをコントロールするために、PAI-1が活性化し
結果的にプラスミンの産生を抑制する。

すなわち、PAI-1はの増加は、血のかたまりである血栓の形成につながる。

<病態との関連>
内蔵脂肪面積とPAI-1の血中濃度が正比例することがわかっている。
また、皮下脂肪面積とは比例しないこともわかっており、内臓脂肪過多に
よる肥満時に特異的に上昇し、血管内に血栓を作りやすい状態をつくり
出す原因物質であると考えられている。

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